金融コミュニケーション論「長期投資を語る」④長期の株価と企業価値の関係

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図①

今回は企業の価値、つまり理論株価と実際の株価の関係についてお話をしたいと思います。

図①は、先進国と新興国の上場企業1株当たり利益と株価の関係のグラフです。

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1株当たり利益(EPS)計算の仕方

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図②

1株当たり利益(EPS)というのは、図②のように計算します。

例えばマイクロソフトという会社の1年分の純利益を分子に持ってきます。

そして発行株数を分母に持っていきます。

そうすると分数というのは、どんな数字であれ最終的に〇/1株と解釈できますから、1株につき、いくら利益をあげているのかという指標になります。

だからどんなに大きな利益をあげていても、発行株数が大きいと(資本金が大きい)、利益が薄まります。

だから、できるだけ少ない株数でより大きな利益をあげた方が、利益効率性が高い、企業価値が高いと言って、あながち間違えではないのかなと思います。

1株当たり利益と株価の相関関係

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図①

もう一回先進国新興国合わせた上場企業の1株当たり利益の推移と、その対象となる株価のチャートに戻ります。

みなさん、どうゆう関係が見て取れますか?

以前、価値と価格の関係は船のイカリのようなもの(アンカー)だという話をしました。

ここでも、そういう関係を見て取れませんでしょうか?

例えば企業価値の一つの概念である1株当たり利益を「アンカー」、株価は船の「位置」みたいなものです。

だから鎖で遊びが多少ありますので、潮流によって風によって、船はあっちに行ったりこっちに行ったりするんだけども、そんな遠くは行きません。

そして、そのアンカーを中心にした鎖の遊びの範囲内で、株価が動くという感じです。

要はこの棒グラフが右肩上がりになると、やはり株価は上がるというわけです。

そして棒グラフが下がると株価が下がるというわけです。

どうでしょうか?相関関係にないでしょうか?

このように、株価は企業の価値をアンカーとして、何も根拠なく動いているわけではなく、基本的に相関して動いているということを、ご理解いただけたと思います。

よく「今後この株価はどうして上がるんですか」と、必ずこういうふうに質問する方がいらっしゃいます。

確かに下がる時はあるんですけども、こういうことが言えませんか?

来年再来年はどうなるか分かりませんけども、おそらく今より10年後この棒グラフは今よりは上がっているんじゃないかなと思います。

そして20年後は10年後の数字よりも上がっているんじゃないかなと思います。

ウォーレン・バフェットはリーマンショックの時に何をしていたか

それでこんな逸話をご紹介したいと思います。

例えばリーマンショックです。

以前に投資の神様と言われるウォーレン・バフェットさんの紹介をしました。

彼は理論株価を計算して、それよりも安い市場価格の時に株を買い、高い時には売る、ということをやる人だとお話しをしました。

そして彼は、いろんな政治や経済のイベントを予測して相場間で売ったり買ったりすることはない、といったお話もさせていただいたと思います。

実は彼はこのリーマンショックの時に何をしたかというと、多くの人が株を売りにいっている時に、一人買いまくっていました。

それは下がった時に、価値があるものが安い価格になる銘柄が増えたからです。

彼はそれを「バーゲン・ハンティング」と言っています。

そして特に、私がご紹介したかったのはここなんです。

2009年のお正月、ニューヨークタイムズの新聞に彼が出まして、タイトルが「Buy American. I Am.」と題されていました。

「アメリカを買いなさい。私は買っています」と言っているわけですね。

内容は、どうして彼が2008年にアメリカの株をたくさん買ったのか、ということが書かれていました。

彼が言った言葉を、一部だけ紹介したいと思います。

「今回のリーマンショックは、確かに大変な出来事で、アメリカ世界経済あと2.3年厳しい状況が続くでしょう。

そうかもしれないけども、私は確信していることがある。

アメリカの上場企業は、今よりも10年後価値は増加していく」

「株を買ったら無人島に行け」

20年後は10年後よりも企業価値は高まっているだろう、ということは言葉を変えてみると、企業価値が高まるということは、株価が上がってきているということですよね。

実際に彼が言ったことを検証してみましょう。

実はアメリカの企業の棒グラフはこのグラフの3倍になり、株価も3倍以上になります。

やはりこの10年で企業価値は高まったんですね。

そしてバフェットさんが言うように、今より10年後、10年後よりは20年後は、さっき言った株価を決めるアンカーは高くなっているんじゃないでしょうか。

それで最後に彼が言っている言葉をご紹介したいと思います。

「株を買ったら無人島に行け」と言う言葉があります。

これはどういう意味かわかりますね?

無人島に行くということは、毎日のニュースを聞かなくて済むということになります。

大統領のきまぐれな言葉で、株価が上がったり下がったりを繰り返していますけども、そういうのはノイズだということなんです。

ノイズを聞いて売り買いしていたら、お金は増えません。

無人島に行くということは、10年後無人島から帰ってくると、この棒グラフは上がっているんですね。

企業の努力によって利益を生んでいく

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図②


先程株価は基本的に1株当たり利益で決まるというお話をしました。

株数は、そんな短期的にコロコロ変わるものではないので、これは一応一定値とします。

ではこの利益は誰が作っていると思いますか?

大統領でしょうか?

確かにトランプの減税政策によって、米国の企業は利益がかさ上げされたかと思いますけど、基本的にこの利益を作り出すのは大統領ではなくて民間です。

企業経営者、企業の努力、これが利益を基本的に生んでいく、ということになっていきます。

そのため10年後無人島から帰ってくると、企業経営者が頑張って死ぬほど働いて、利益を上げて株価が上がっているということになります。

実際に図①は20年ぐらいしか出ていなかったと思いますので、データがとれる限りSP500アメリカの企業500社で同じようなことをやってみました。

そうしますと1株当たり利益が1960年から2018年までの58年間で何と43倍拡大します。

もちろん上がったり下がったりを繰り返しながらです。

そしてアメリカのSP500株価指数も同期間44倍値上がりしています。

これが「長期的に株価がなんで値上がりをするか」ということの裏付けとなるお話でした。