金融コミュニケーション論「長期投資を語る」③「価値」を計算する
今回は具体的に債券の価値、理論価格を計算してみたいと思います。
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お金には時間価値がある
図①をご覧ください。
1年後に5万円、2年後3年後4年後にも5万円、そして5年後満期になります。
満期には100万円と利息の5万円が戻ってきます。
こういうキャッシュフローをもたらす資産の価値は、いくらが妥当なのかということが、債券の価値、理論価格ということになってきます。
ここで「お金には時間価値がある」というファイナンス的な概念を説明いたします。
例えば1年後の5万円と今の5万円は価値は同じでしょうか?
5年後の105万円と現在の105万円は価値は同じでしょうか?
当然違います。
5年後の105万円より、今の105万円の方が価値があります。
つまり、5年後の105万円は今の105万円より価値が小さいということになります。
ではどのくらい小さいのかということを計算していきます。
例えば1年後の5万円の現在価値をPV(プレゼントバリュー=現在価値)とします。
5万円を1+1年間の金利で割ります。
そうすると5万円を1よりちょっと大きい数で割るので、5万円を少し割った金額になります。
その金額と5万円が等しいということは、価値が等しいということになります。
では、2年後の5万円はどうなるか?
2年間なので2乗にし、5万円÷(1+金利)²にします。
3年後は3乗、4年後は4乗、5年後は分子が105万円になり5乗
ここで計算された数字を全部足していくとキャッシュフロー収入をもたらす債券となります。
これは債券じゃなくて、不動産でもいいです。
現在価値と将来価値との関係
どうしてこのような計算になるのかを、図②現在価値と将来価値との関係で説明いたします。
例えば現在100万円で1年後の金利が4%(リクスなし)とします。
そうすると100万円は来年104万円です。
ファイナンスの世界では、現在の100万円と1年後の104万円は価値が等しいと考えます。
これを式にすると
104万円=100万円×(1+0.04)¹
2年後はどうでしょうか?
2年後は1年後の104万円に金利が4%ついて108万円ではなくて、複利なので108.16万円になります。
現在の100万円と2年後の108.16万円は等価であるということになります。
これを式にすると
108.16万円=100万円×(1+0.04)²
このようになります。
これを文字式で表すと図②の右のようになります。
n年後(例えば1年後だったらnは1)の将来価値(FV)は現在価値PV(100万円)×(1+金利r)ⁿ
すなわちPV=FVn/(1+r)ⁿ
現在価値1年後の5万円、2年後の5万円、、、と足していきます。
債券価値を実際に計算した場合
図③のように
- 毎年の利息収入が5万円
- 満期5年の利付債券
- 市場金利が年4%(リスクなし)
上のように仮定します。
この場合、資産価値は先程の説明通り計算すると答えは1,044,518円となります。
ただし市場価格と計算で出した価値は一緒ではない
しかし実際の債券市場で、こういう債券がいつもこの値段で取引されるかというとそうではありません。
マーケットというのは需給関係でこの値段より高かったり安かったりしたりします。
それを市場価格と言います。
計算で出した答えは理論価格あるいは価値なので、図④のように価値と価格は常に一緒ではありません。
いかがでしょうか?
今回は債券の価値、理論価格の計算方法を説明させていただきました。