投資信託論「インデックスファンドの基礎知識」①初めて物語

インデックスファンドはどのようにして誰が作ったのか、というお話をしたいと思います。

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著名人からも称賛をうけるインデックスファンド

インデックスファンドは、1976年バンガードの創業者であるジョン・ボーグルが作りました。

残念ながらジョン・ボーグルさんは、2019年惜しまれて亡くなられましたが、発明したインデックスファンドは、色んな方々から賞賛を受けています。

例えば、経済学をやっている方なら知っているサミュエルソンは、こんなことを言っています。

「ボーグルの発明は、自動車、アルファベット、グーテンベルクの活版印刷、そしてワインとチーズ発明に匹敵する」

そして投資の神様といわれている、ウォーレン・バフェットもこんなことを言っています。

「低コストのインデックスファンドは、投資家の大多数にとって最も聡明な投資である」

「私が死んだら遺産の10%を現金に、残りの90%はインデックスファンドに投資するよう妻に遺言を残すつもりだ」

ウォーレン・バフェットは、株式、個別銘柄の投資家で大成功している方ですが、そういう彼がインデックスファンドについて、こういったことを言っているのは、とても面白いですね。

「個別銘柄投資、長期でリターンをあげていくのは、私くらいにならないとなかなか難しいので、一般の人であれば、インデックスファンドで十分ではないか」

と、もしかしたらこんなふうに言いたいのかもしれません。

それでは、ジョン・ボーグルはどうしてインデックスファンドを作ったのでしょうか?

これはあくまでも推測です。

なぜ ジョン・ボーグルはインデックスファンドを作ったのか?(推測)

表①

表①は有名なイボットソンの1926年から90年後2015年末までの超長期のチャートです。

ここで、一番値上がりしているのが26433倍の「米国小型株式指数」です。

次が5390倍の「米国大型株式指数」です。

この結果を見て、このグラフに投資したいなと思いませんか?

おそらくジョン・ボーグルは、このグラフを見て「このグラフそのもの買えたらいいな」と思ったんじゃないかなと思います。

自分で上場銘柄を全部買うとしたら、最低金額何億か何十億かかかってきますが、インデックスファンドというのは、わずか1000円で上場企業すべて買えるという、非常に有効な金融ツールになります。

個人投資家がインデックスファンドを使えば、国際分散投資が簡単にできるということは、大変素晴らしいことですよね!

インデックスファンドの種類

表②

ところでインデックスファンドは、例えば日本株式であれば東証第一部株価指数(TOPIX)、日経平均あるいは日経225があります。

TOPIXというのは、東証一部上場企業を全銘柄時価総額のウェイトで加重平均で買って、指数を作っていきます。

時価総額というのは、発行株数×直近の株価になります。

例えば時価総額が高いところを多めに買って、時価総額が小さいところは、ごくわずかしか組み入れない、こんな感じでTOPIXは構成されています。

それに対して日経平均というのは、日経新聞社が選んだ225銘柄を単純平均で買います。

業界的に言うと日本株、インデックス、ベンチマークというと、ほとんどのところが、このTOPIXを置いています。

インデックスファンドの運用方法

インデックスファンドはどうやって運用するのか?というと、大まかに2つあります。

1つは「全銘柄組み入れ法」という、先程申し上げた時価総額に応じて組み入れ銘柄を全部買ってしまうという方法です。

もう1つは「サンプリング法(層化抽出法)」で、例えば債券ファンドでよく利用されますのは、指数が満期までの1~3年は何%で組み入れられているのか、3年~5年が何%組み入れられているのか、5年~7年が何%組み入れられているのか、これによって組み入れ銘柄をその比率に応じて入れていくことになります。

株式の場合、東京証券取引所というのは業種が33ありますが、例えばベンチマークの組み入れ比率が、情報通信産業が11%、医薬品が6%となっているので、この比率に応じて組み入れ銘柄を入れていく、というやり方をサンプリング法と言っています。

特に債券インデックスファンドではサンプリング法を使い、株式インデックスは全銘柄法を入れるというのが、一般的かなと思います。

トラッキングエラーの概念

あともう一つ、覚えておくと便利なことがあります。

トラッキングエラー(TE)というもので、ベンチマーク(インデックス)とどれくらい乖離するかという概念になります。

あるアクティブファンドがどれくらいのリスクがあるのか、どれくらいベンチマークと乖離する可能性があるのかというのは、このトラッキングエラーの数字が分かれば、だいたいイメージができます。

このアクティブファンドはインデックスに対してどんな動きをするのか、そんなイメージがこの数字一つで分かります。

トラッキングエラーの計算式

TE=√Var(Pr-Br)


Prというのはポートフォリオのリターン、Brというのはベンチマーク(インデックス)のリターンということです。

このポートフォリオというのは、アクティブファンドをイメージしてください。

アクティブファンドのリターンとインデックスのリターンの差、これの標準偏差で、つまり、ばらつきです。

それがどれくらいあるかということを計算した数値です。

例えば推定トラッキングエラーが6%のアクティブファンドの場合で、ベンチマークの指数が20%上昇したとします。

そうすると、いいアクティブファンドだと20%+6%の26%に上がり、逆に銘柄選択に失敗してしまった場合は、20%-6%つまり14%しか上がらないということになります。

例えばトラッキングエラーが25%の場合、ベンチマークの指数が20%上昇したとします。

このファンドはうまくいけば45%になり、その代わり裏目に出ると-5%になります。

アクティブファンドがどんな感じの動きかを知りたい場合には、運用会社の方が来られた勉強会などで「このファンドのトラッキングエラーって何%くらいですか?」と聞くと教えてくれると思います。

そうしますとだいたい市場平均に対してどれくらいなのかって、イメージがつくかと思います。

トラッキングエラーの数値とリターンの関係性

表③

表③にトラッキングエラーの数字が矢印に書かれています。

一番左のインデックスはトラッキングエラーが0だけれども、実際には誤差がありますので、だいたい0~1%くらいになります。

日本株のインデックスファンドの場合、一部上場企業が2150社あります。

アクティブファンドはここから銘柄を絞り込みます。

だいたい日本株の投資信託は、アクティブファンド組み入れ銘柄80~100くらいが多い印象です。

かなり絞り込むと50社、30社となってきます。

組み入れ銘柄を絞り込むと、トラッキングエラーが大きくなり、ベンチマークとのズレが大きくなっていきます。

逆に銘柄数が2150社だと選べるリターンもインデックスと同じになります。

従ってアクティブファンドのマネージャーは、この銘柄を絞り込むことによってインデックスを上回るリターンを上げようとします。

トラッキングエラーが大きい値でないと、インデックスを超えるリターンをあげることはできない、ということになってきます。

これがリスクとリターンが表裏一体だということの表れでもあります。

組み入れ銘柄数だけではありません。

セクターベッドは、東証が決めた組み入れ銘柄33業種の比率が決まっています。

例えば情報通信業は全体の10%、医薬品は6%と業種によって全部決められています。

このファンドマネージャーは、情報通信関連業がきそうだな、と思ったら例えば25%と多めに買います。

このことを「オーバーウェイト」といいます。

逆に医薬品は、しばらくこないと思ったら医薬品を「アンダーウェイト」にします。

このようにアクティブファンドというのは、ベンチマークのセクター比に対してある意味かけをして、それによってα付加価値をとっているということになります。

セクターベッドだけではなくファクターベットもあります。

つまりグロース系にかけるかバリュー系にかけるか、大型株系にかけるか小型株系にかけるか?

こうやってインデックスを上回るようなリターンをあげるのが、アクティブファンドになります。

表③をもう一度見てください。

クローゼットインデックスは、組み入れ銘柄がほとんどインデックスと変わらない400銘柄などで、得られるリターンもほとんど変わらず、隠れたインデックスファンドという意味になります。

年金の運用は、インデックス+αで、αは欲しいけどリクスをさけたいということで、大きいトラッキングエラーのアクティブファンドではなく、だいたい4~6%くらいになります。

トラッキングエラーをどんどん大きくしていくと、バリュー系、グロース系、それからかなり特殊な業種に組み入れ銘柄を集中させていくテーマ型で、トラッキングエラーが20~25%になっていきます。

テーマ型ファンドはいい時はいいのですが、ブームが去ってしまうと大幅にパフォーマンスがベンチマークに負けてしまいます。

このように、「日経平均株価の東証第一部株式指数の上昇や下落に対して、このファンドはどれくらいの位置のところにくるのか」ということがあらかじめ分かるということが、このトラッキングエラーの使い方ということになるかと思います。