投資信託論「投資信託って何なの?」③投資販売の不都合な真実

日本の投資信託の運用と制度はグローバルスタンダードになりましたが、販売についてはまだまだ暗黒時代が続いていると「②投資信託の暗黒時代」でお話をしました。

今回は金融庁のレポート調査をもとに投資販売の不都合な真実についてお話をします。

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積立分散投資の効果

左の図「積立分散投資の効果」は1995年~2015年までのお客様がこんな運用をしていたら、こんなにお金が増えていましたよというイメージのものです。

緑色「A定期預金」は、この20年で1.32%増えて、ほぼ横ばいです。

青色「B国内の株・債券に半分ずつ投資」は、この20年で38%増えています。

赤色「C国内、先進国、新興国の株・債券に1/6ずつ投資」は、この20年で79.9%、ほぼ8割増えています。

国内、先進国、新興国の株・債券に1/6ずつ投資

この中で赤色の説明をいたします。

こちらは国内、先進国22か国(日本を除く)、新興国23か国の株と債券のインデックスファンドに1/6ずつ、年1回の積立・分割投資になります。

例えば95年の1月に100万円を1/6ずつ均等に買い、翌年の1月にまた同じように買い、これを20年間続けます。

そうすると20年で2000万円の積立をして、それが8割増えるということは、3600万円貯まることになります。

ちなみにこの20年間は、特別いい経済状況というわけではなく、ITバブル、リーマンショックなどがありました。

こんなことがある20年間でも一応「長期・分散・積立」によって増えたということになります。

規模の大きい投資信託の日米比較(純資産額上位5銘柄)

右の図「規模の大きい投資信託の日米比較(純資産額上位5銘柄)」は、残高上位ベスト5を日米で比較したものです。

ここで我々がまず知っておきたいことがあります。

日本のベスト5というのは時代とともに顔ぶれが変わってきます。

なぜかというと、日本の多くの金融機関は「今これを買うと上がりますよ、そろそろ売りですよ、今度こっちに乗り換えましょう」と、相場ベースの営業をしているからです。

こんな形で日本のベスト5の顔ぶれは、毎年「猫の目」のよう変わります。

アメリカのベスト5の顔ぶれは、だいたい上位にきているのは、米国株式、米国債券、世界株式、世界債券、それぞれのインデックスあるいはアクティブ型で(日本みたいにテーマ型、毎月分配型のようなタイプではないので)、ほとんど変わらないのに、日本の顔ぶれは変わります。

ここが問題なのです。

そこで「顔ぶれが変わる」ということを問題視して、20年間のデータ期間で調査をしてみました。

調査内容は、「ベスト5のものを毎年年1回乗り換えて、10年間運用したらお客様のお金はどうなっていたか」という内容になります。

内容を説明いたします。

95年の1月にその年の売れ筋ベスト5(金融機関でお客様が一番買ってもらったもの)を買い、次は96年1月にその年の売れ筋ベスト5を買い、そして次は97年1月に買い、10年後にいくらになったかを計算します。

それぞれ同じように96年から10年、97年から10年と何回かサンプルをとり、それらの平均値が「収益率の過去10年平均値」として数字を出します。

そうするとアメリカが5.20%に対し、日本は-0.11%でした。

どう解釈したらいいかというと、日本の場合、売れ筋ベスト5を毎年乗り換えて投資すると、平均的に損をするということになります。

つまり金融機関の営業マンは、お客様に対してのアドバイスが「お客様に付加価値を提供していない」ということが分かりました。

これが2回目の講義でお話した「販売が20年以上前から基本的に変わっていない」という理由になります。

ちなみに右下の表にある「国際分散ポートフォリオのリターンを決定する要因」についてですが、「ゲイリー・ブリンソン」が「売買タイミングをとることによってリターンを改善できるか?」ということを調査したところ、ほとんどの場合においてリターンにダメージを与えていることが分かりました。

これは世界のプロの機関投資家でもタイミングで付加価値を上げることは難しいということが、その調査で明らかにされていました。

まさにその結果を物語っている調査結果が出てしまったのかなというのが、こちらの金融庁さんのレポートでございました。